荒川区ビジネスプランコンテスト2023 最優秀賞受賞

第74期生 園田たきね(そのだ・たきね)さん 46才 会社員/フリースクール代表

わたしは「逆境」を居場所に変えることができました。
コーチング学習による気づきと活用の仕方をご紹介します。

コーチングを活用して事業が最優秀賞に!

わたしは3人の子育て中の会社員です。
昨年11月「荒川区ビジネスプランコンテスト2023」で最優秀賞をいただきました。受賞したビジネスプラン(事業)は「子どもの個性を活かしたフリースクール」です。

本業とは、まったく別の分野で賞をいただき、今回の受賞をきっかけに、いろいろな方から反響があり、驚いています。

コーチングをはじめて6年。
今は、これまでとは別の世界を見ている感覚です。
生きている実感や、幸せを感じることができるようになりました。こんな風に言葉にすると怪しい宗教みたいに聞こえるかもしれませんが・・・。

コーチングを学んでみたい

わたしがコーチングを学んだ理由。それは、何よりも当時の環境によるところが大きいです。というのも、結婚式後1か月で夫が病気になってしまいました。加えて、不妊治療を受け3人の子どもを授かったものの、3人の子育てと会社員としてフルタイム勤務、夫の看病。毎日バタバタと過ごす日々、常に何かに追われている毎日・・・。

自分の気持ちを蔑ろにしていることには薄々気づいていましたが、どうすることもできず、押し殺して日々を過ごしていました。そんな時に、区民向けの講座やコミュニティカレッジで「コーチング」と出会いました。

気持ちに焦点をあてた手法に「へー、おもしろい。」純粋にそう思いました。
普段、育児や家事、仕事を優先して、諦めがちな自分の気持ち。
でも、その時はなぜか、もっとコーチングを学んでみたいという気持ちを抑えられず、0歳の子どもを片手に抱っこしながらネットで探し回りました。そして出会ったのが、日本コーチ連盟のコーチ養成プログラム。私が求めていたものだ☆

受講したいけど、子どもたちをどうするか。しかも朝から晩まで。夫は、3人の面倒は無理だし。でも、何とかしたい・・・。私が頼れる先は、保育園しかありませんでした。条件に外れつつも、必死の願いに特別に許可をいただけました。
また、夜は祖母にも来ていただけるよう段取りもして、コーチングに通えるようになりました。

学びと気づき、効果

日本コーチ連盟のコーチング学習課程は、大まかにご紹介すると「相手との対話技術(コーチング)」と「自分との対話技術(セルフコーチング)」を学べるように構成されています。
学習効果としては、特にわたしの場合、「自分との対話」を通じて、自分と向き合い、自分で自分の気持ちを過剰なほど蔑ろにし続けていたことや、その“副作用”の影響力に気づいたこと、そして、自分の気持ちをもっと大切にするようになったことが大きいと思います。

すると、とくに時間の使い方を大切にするようになりました。言い換えると、今、自分が大切にしたいものの素直な理解につながり、自分を大切に扱うように、時間を過ごすようになりました。
このことは、意外なことに配慮ではなく自然に、人の時間も、同じように、大切にしたいと考えることにもつながりました。
さらに、自分の皮膚感覚、耳の感覚などが敏感になり、特に言葉、文章の端々の雰囲気が以前よりもくっきりと分かるようになりました。

気づきの効果は、自分のみならず相手、それも身近な職場や家庭で、相手をコントロールすることが減ったことに反映されているように感じます。
これまでは、“副作用”(自分の気持ちを蔑ろにしてまで身に着けた知識や経験への執着心のようなもの)のため、自分のやり方がいいに違いないと、信じ込んでいて、どかどかと土足で相手の縄張りに入り込み、「どうだ!いいやり方だろう」と押し付ける事が日常茶飯事でした。

そのため、相手からの提案やアドバイスは、私にとっては「指摘・批判」と感じやすく、拒絶し、そんな指摘を受ける自分は何てダメな人間なのだと、自分を傷つけていました。今思うと自作自演のような状態(笑)

今では、職場の人たち方や子どもたちに対しても、その人の力や想い・エネルギーに焦点をあて、信頼することをベースにかかわっています。信頼できるようになった、といったほうがしっくりします。

例えば、3人の子どもたちがケンカをしだしたら、カオス状態。収拾なんてつくはずない。だけど、それ自体がすごいエネルギー。泣いて叫び、寝転びながら訴える末っ子。
「うわー、すごいパワー。そんなにやりたいんだー。」カオスの中で、そんな風に思ってしまいます。だから、そのエネルギーを抑えるように関わるのではなく、「すごーい、そんなにやりたいんだねー。」と、自然と関われるようになりました。だって、その力がすごいんですから。あまりにすごすぎて、敬意を示してしまう感じ。ぷぷっと笑ってしまう感じ。

さらに、コーチングを続けることによって、自分特有の「怒りの仕組み」も徐々にわかってきました。この気づきから、自分に余白を作るように生活しています。自分の好きな事をする。自分にとって大切な事をする。嫌いな事はしない。嫌いな事をしないでいい仕組み、工夫をする。自分の心に素直にシンプルに生きる。自分に鞭を打つような追い込み方はしないで大丈夫。やっと、その選択が少しだけできるようになりました。

フリークール事業化のきっかけ ~子どもより自分が不安~

そんな中、子どもたちが不登校になりました。コーチングを学びながらも当時の私は、「学校に行きたくない」と言い出した長男を、何とか学校に行かせようと引きずり倒しながら無理やり学校に行かせていました。
意識上は、子どものため、とやっていましたが、セルフコーチングをして自分の内面を掘り下げていくうちに、子どもが「みんなと違う道」を歩んだら、実は「自分が不安」だから、その解消のために「子どもよりも子どものような稚拙な考え方をしている」自分に出会いました。

二人で選択

そうこうしているうちにコロナになり、鬱屈とした世の中になると、長男は不眠症になりました。夜中に漢字の書き取りをしてみたり、本を読んでみたり、二人パジャマ姿で真夜中の街を散歩したりして、眠気を誘ってみる日々。明け方に寝る生活・・・。
私は次の日、いつも通り出勤。そんなことをしていると、私も長男も疲弊。いつまでもこんなことをしていては、誰にとってもよくないと思い、「二人」で学校に行かない選択をしました。

この事件をきっかけに、グワン、グワン揺れていた私の中の価値観、それは、義務教育は受けるもの、大学まで行って、就職するものは、ついにガラガラと崩れ、新しい価値観が徐々に作られていきました。

私も通いたい!

少しずつ長男は元気になっていったのですが、昼間に行くところがなく、ただ引きこもるしかありませんでした。そこで、私はフリースクールについて、ネットで調べたり、子ども達と一緒に訪問したりしました。その中で出会った、「サドベリースクール(デモクラティックスクール)」に一目で惹かれました。
「私も、この学校に通いたい!!」子どもそっちのけで、夢中で調べまくりました。
カリキュラムなし、テストなし、日がな一日好きな事をして過ごしていい。
夢のような学校。
私は、漢字の書き取りや算数のドリル、意味も分からず、ただただ暗記する勉強が大っ嫌いでした。訓練学習、つまんない・・・。でも、持ち前の感情を押し殺す力を使って、やりたくないことをやり、そこそこ優秀な成績を取っていました。

エネルギーがわいてくる ~自発的な行動/実感~

「私、こういう学校に通いたかったな。もう一度、小学生をやり直したい!」
そう思ったら、自分でもどこからエネルギーがわいてくるのかと思うほど、この目ですぐにでも見たくなり、コロナの合間を縫って何度もリスケし、兵庫にある日本で初めてのデモクラティックスクールに子ども3人を連れて、研修を受けに行きました。
研修を受けてみて、やっぱりいい!こんな学校を作りたい。
子ども達も引っ越しして、ここに通いたい口々にいっています。子どもたちのお墨付きだったら、きっと他にも合う子供がいるはず。そう思って、今、住んでいる大好きな荒川区に作ってみようと考えました。

私が求めていたもの

サドベリースクールは、子どもの生きる力を100%信頼する理念。
子どもは、大人から指示や命令をされなくても自分の生き方を知っているという考え方。
もともと持っている個性を活かすコーチングにも通じることもあり、すっと自分の中に入ってきました。
凸凹を凸凹のまま。そのままが一番美しい。それを大切にする教育。
「好き」を切り口にして、学びを深める教育。私が求めていたものでした。

でも、本当にこんなに好き勝手、自由にしていてその後の人生は、大丈夫なのだろうか。
サドベリースクールの本を読み漁り、客観的な情報を探しました。すると、アメリカのスクールでの調査結果を発見。その後の人生は、卒業生の85%が幸せと感じており、自分の個性を活かし、人生の満足度高く情熱を持って職業についてというエビデンスがありました。この結果を見て初めて、自分にサドベリースクールをする許可が下り、挑戦してみようと決心しました。

小さくスタート ~自発的な行動/決意~

スクールを運営している方々に、いろいろとお話を伺うと、みなさん固定費が嵩んで運営が不安定になるという事でした。そのため、自宅を購入してその1階部分で活動することを決意。ちょうどいい場所に土地が空いたため、清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入。その後、家を建てました。

まず、小さくスタートしようと思い、2023年1月から、月一回、会社を休んで開校。ネットで調べながらHPやチラシを作ったり、インスタやFacebookを始めました。
フリースクールの運営をスタートして、様々な方が応援やご協力をしてくれたり、励ましてくれ、ご寄付をくださったりとたくさんの勇気とエネルギーをいただきました。
自分が好きな事をしているだけなのに、コーチングの学びのとおり、気づけばこんなにご支援していただけることに、ただただ驚いています。

私一人だったら、怖すぎて到底できない事ばかり。でも、仲間がいるから、見守ってくださる方がいるからできたこと。主語が大きくなってしまうのですが、この事業を通して、世界がこんなにも寛容で平和だったことを知りました。今まで知らなかった世界を体験できただけで、幸せです。

本当の気持ちを言葉に

コーチ養成プログラムを受講して、「気づきを重視」するコーチングのコーチとして、まず自分をより深く知ること、自分は何が好きで、何が嫌いなのか。何を大切にしたいのか。どう生きたいのか。そこに気づけたことで、ここに辿り着けました。
また、信頼できるコーチングの仲間がいてくれたからこそ、安心して本当の自分の気持ちを言葉にすることができました。

とくに森山学長(マスターコーチ)には、フリースクールをやってみたいと初めて本当の気持ちを打ち明けた際、嗚咽しながら訴え、受け止めてくださったのが本当にうれしかったです。その頃は、夢物語、学校を作るなんて、自分ができるのだろうか。そんな不安の中で、何の確信もなく言葉にしてみた瞬間でした。

自分の反応に素直

フリースクールの運営を通じて、人と関わるためには、コーチングの実践を行い「まず自分の反応に素直である必要がある」と考えています。相手の反応やエネルギーを受け止めるためには、まず自分が、今、この瞬間、どうなっているのか受け止める必要があります。そのためには、コーチングの技術と訓練は欠かせません。本業、子育て、家事、フリースクールの運営の合間を縫ってでも、時間と労力を掛けて、取り組むべきことだと考えています。

皆様のお力をお借りしながら、今、自分があることに感謝できるようになりました。家族や不登校になった子どもたちにも感謝しています。
まだスタートしたばかりのフリースクールですが、少しでも社会に貢献できる活動ができるように取り組んでいきます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

サドベリースクール Alumama(アルママ)

今の学校が合わない子供たちへの「不登校児支援」を中心とした少人数制の学校です。
子どもたちの個性を大切に、自分の興味や関心に基づいて自由に学べる環境を提供します。
自主性や創造性が生まれ、自分で考えて行動する力が養われ、社会性や協調性も身につけることができます。

https://alumama.net/