修了生の声「金澤 康さん」
コミュニケーションに限界を感じていた
金澤康さん(51歳)医師
【第77期CP応用コース修了】
糖尿病の専門医である金澤さん。患者さんに対し、治療に必要な日常の行動変容を促すことが重要ですがなかなか変わってくれない。
その上人間関係の難しさにも直面してしまい、そんな折にコーチングに興味関心を持つようになったそうです。
御自身の中でどんな変化があったのか、お話いただきました。
コーチングを学んでみようと思ったきっかけは何ですか?
コミュニケーションに限界を感じていた
私は、市中病院で糖尿病を専門とする医師をしています。糖尿病という病気は、患者さん自身による生活管理が必要になる病気です。そのため、私たち医師はコミュニケーションを通じて患者さんの自覚と、治療に必要な日常の行動変容を促していくことが重要です。
しかし、日常の診療の中で、私がいくら頑張っても“変わってくれない患者さん”とそれに対して“イラつきや焦りを覚える自分”を抱え込んでいました。さらに、私の部下との関係性にも難しさに直面していた時期とも重なり、人と人とのコミュニケーションに限界を感じていました。
それらを解決する「武器」として、コーチングに興味関心を持つようになりました。コーチングを使って相手を知り、コントロールしたい、その手段としてコーチングを学ぼうとしたのが最初のきっかけだったわけですが、今考えてみるととても大きな勘違いでした。
コーチングを学んで、どのような気づきや学びがありましたか?
「自分と自分」のコミュニケーション
私は、コーチングを学ぶことで相手を理解することができる、私の思い通りに動かすことができるだろうと考えていました。
しかし、それは大きな間違いということがわかりました。相手のことを理解する以前に、“いかに自分が自分を知らないか”がわかっていなかったのです。私はここで、コミュニケーション技術を知りたいと受講しましたが、そのために大事なのは「自分」とはどういう人間なのかを知ること。そして、それを始まりとして初めて相手に接することができるということを学びました。
少し切り込むと、ここのプログラムは、コーチングを従来のような目標達成のための方法のようには限定していません。これまでにない、新しいコミュニケーションの選択肢として教授されています。この新しい選択肢は「相手との対話技術(コーチング)」と「自分との対話技術(セルフコーチング)」としてつくられています。
とくに「自分との対話技術」を学ぶことで、他人に見えないように隠している自分、そしていつの間にか「本当の自分って、一体なんだっけ?」と自分にも見えなくなってしまっている「本当の自分」を掘り下げて深く知ることができます。結果、自分が面白く、興味深く感じるようになりました。
実感を持つことで、コーチングは、まず初めに「自分と自分」とのコミュニケーションをとれることが、「自分と相手」とのコミュニケーションに繋がっていくのだと得心しました。
さらに「相対化」の学び。自分に向かいあっていくと、いかに自分が「フツウ」ではないかということがわかってきます。同時に、自分にとっての「フツウ」をこれまでいかに相手に押し付けてきたかも実感することができるようになりました。
自分とは違う相手の「フツウ」がどのようなものか大きな興味・関心となり、これまで感じていた自分とは違う「相手」に対するときの難しさや、拒否感はかなり少なくなってきたように感じています。
コーチングを学んで、どのような変化がありましたか?
コミュニケーションが楽
一つの大きな変化としては気持ちが穏やかになったことだと思います。普段の生活の中で、これまで大きく波立っていた自分の気持ちが、いつも細波くらいに落ち着いているのを感じます。
そして、もし大きく波立つことがあったとしても、それを自覚し、「どうしてそういう気持ちになるのか」について考えるようになりました。ある場面で“こうなりやすい、なってしまう自分”というものを知ることによって、「自分と相手とは違うんだ」ということを受け入れることができ、そしてそれを前提に人と相対することによって、これまで相手に対して感じやすかった拒否感、拒絶感が少なくなりました。
私は一生懸命に相手を自分の思い通りにしようとしていた・・それが叶わないことによる「違和感」や「イライラ」がなくなったのだと思います。そして、この“穏やかさ”が、人とのコミュニケーションを楽にしているのだと実感しています。
「変な人」に興味関心をもてる
仕事をしていると、これまで特に患者さんに対して「この人と自分は合わない」「今日はこの人が来るのか・・嫌だな」という気持ちを持つことが沢山ありました。今でもそういう気持ちが全くないとは言いきれません。
でも、最近では他の人が「どうしようもない人」とか「変な人」という人に対して、むしろ「え、そんな変な人なの?どのくらい変なのか聞いてみたい」という興味・関心をもつようになりました。
私がそのようなことを口にすると、周りの人たちからは呆気にとられた表情をされることが多いですが、そのような相手に対する興味を持ったコミュニケーションは、最終的に相手との関係性も変えてくると思います。
以前は、負担にも感じていた相手とのコミュニケーションがとても楽に、そして興味深いものに変わりました。外来で多くの患者さんを診終わったとき、以前は疲れ切っていたものが最近は疲労感は少なくなった・・以前の自分との違いを実感します。